特許事務の仕事内容・給料レポート

はじめに

「特許事務所」で働く女性のキャリアレポートです。

レポート者のプロフィール
性別:女性
勤務地:神奈川県
職業・職種:特許事務
雇用契約形態:正規雇用
所有資格:知的財産管理技能検定
TOEIC

この職業を目指した理由を教えてください。

知的財産の分野に前々から興味があり、海外とのやり取りがあるので自分の得意な英語も役に立つと思い、全く関係のない分野から転職しました。

仕事内容について詳しく教えてください。

特許事務の仕事は主に、特許出願の事務手続きとクライアントとのやり取りといった弁理士のサポート業務です。
英語が得意であれば、そこに書類の翻訳も加わります。

事務手続きについては、特許庁に特許や商標などの出願関連書類を提出したり、受領したりといった事務手続きをする為のインターネット出願ソフトを日常的に使います。
弁理士が作成した書類をデータ化して、インターネットで提出し、特許庁の審査結果を受領します。
特許庁への書類の提出には厳格な期限が定められているため、クライアントの権利を無効にしないために徹底した期限管理を行います。
クライアントが海外出願を希望する場合は、各国の代理人事務所に連絡を取り、その国での出願手続きを依頼します。

クライアントとのやりとりについては、出願をした際、審査が通った際、拒絶が出た際、権利の更新が必要になった際など、出願に関する全ての動きをクライアントに報告します。クライアントが海外の代理人の場合もあるので、その際は特許庁からの書類を英語に翻訳して送ります。海外の代理人は国によっては日本人と違い多少ルーズな部分があるので、期限がある手続きについては手厚くフォローします。

よくある1日の仕事の流れについて詳しく教えてください。

7時半:自宅を出て電車で通勤する
8時20分:事務所に到着
8時半:掃除当番のため、事務所内の掃除機がけ、トイレ掃除
9時:メールチェック
急ぎのメールには返信し、それ以外はフォルダに振り分けたり、技術担当者に転送する
10時:クライアントへ報告書類を作成、メールと郵送を準備
12時:昼食
自分のデスクでお弁当を食べ、仮眠をとる
13時:海外代理人への報告書類を作成
特許庁からの審査結果の書類を翻訳する
15時:新人事務員に出願手続きのやり方を教える
16時半:本日分の郵送書類を確認後、郵便局に持ち込む
17時:事務所内の備品を軽くチェック、足りないものをアスクルで注文
17時半:日報を書いてメールチェック
急ぎのメールには返信
18時:定時で退社

給料・残業・有給休暇について教えてください。

事務職の基本給は25万円前後で、そこに残業代が加算されます。ボーナスは年間で5ヶ月分ほど支給されたので、年収は400万円を少し超えるくらいでした。残業は多くても1日に1〜2時間くらいで、差し迫った期限がなければ定時で帰っていました。仕事さえ終わればいくら休んでも大丈夫な雰囲気なので、有給休暇は非常に取りやすかったです。

働いているときに困ったこと・気になったことや改善したかったことを教えてください。

常に人手不足により最低限の人数で仕事を回していたので1人1人の負担が大きいことが悩みでした。物理的な負担だけでなく、自分が行った仕事をダブルチェックする人がいなかったため、絶対に間違えられないという心理的負担が凄まじかったです。間違いを起こせば、クライアントから訴えられると所長から言われていたので必死でした。
この状態が長く続いたせいで、ストレスで体を壊してしまい、長い間通院することになってしまいました。
私以外にも、深刻な病気にかかって辞めていく事務員が何人もいました。そのため人の入れ替わりが多く、なかなか定着しないのが問題でした。
仕事をダブルチェックする人がいれば必要以上にプレッシャーを抱えることがないので、改善したかった点でした。

この仕事に就いて、恵まれていると思った点をおしえてください。

労働基準法に則って、しっかりと残業代がでました。技術職は残業が多すぎるとボーナス査定が下がりますが、事務職は残業すればするほどお給料は増えました。
自分の仕事さえ終わっていれば、残業をしてもしなくても誰にも嫌な顔をされないのが気楽でした。
また福利厚生が手厚く、飲み会や社員旅行などのイベントは全て会社持ちで、3泊4日で台湾や香港など近場の海外に行くこともありました。結婚や出産の際にはお祝い金も出ました。

この仕事で感動したこと、または失敗したこと・大変だったことのエピソードを教えてください。

期限が決まっている提出書類をクライアントに確認してもらい、提出して良いかの返事をもらわないといけない案件があったのですが、弁理士との意思疎通がうまくできておらず、弁理士がすでにクライアントにデータを送ってくれたものだと勘違いしていました。
実はデータが送られていないと気づいたのは提出期限前日でした。慌ててクライアントにデータを送って確認してもらい、事なきを得ましたが、もう少しでクライアントの特許出願を駄目にしてしまうところでした。もし先方の担当者がその日不在だったらどうなっていただろうと血の気が引きました。言葉でしっかりと確認しなければいけないと猛省しました。

職場恋愛について教えてください。

私が勤めていた事務所の人材は中途採用がほとんどだったため、入社した時点で結婚していたり、パートナーがいる人が多かったです。
独身同士でも、職場恋愛や結婚は前例がありませんでした。
職場以外でパートナーを見つけた人の中には、昔の同級生と再会して…というケースが何人かいました。また在職中に結婚をした同僚は、ネット婚活で理想的なパートナーを見つけて、スピード婚していました。仕事が忙しい中の婚活だったので、ネットは効率が良いと話していました。
とにかく忙しい仕事なので、のんびり同僚とお話をする時間がなく、なかなか職場恋愛には発展しないようです。

この職種全体でのブラックな面・問題点を教えてください。

特許庁の提出期限が絶対的なものなので、期限に間に合わせるためには、長時間の残業が必要になる場合があります。

この職種全体でのホワイトな面・よい点を教えてください。

特許法という法律を扱う職業なので、他の法律を犯すような行為、例えば労働基準法に違反したり、不正経理などが行われることは考えにくいです。

この職業・業界全体の5年後の展望を教えてください。

知的財産制度はこれから先も存続すると思うので、仕事がなくなるということはないでしょう。グローバル化により、いっそう海外出願の仕事が舞い込んでくると思われます。

さいごに - 同職業を目指す方へ激励のメッセージ

勉強するほどキャリアアップが目指せる職業なので、常に精進し続けたい人に向いている仕事だと思います。

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